「リセットⅢ」

先日私が所属する東洋はり医学会でお話をさせていただく機会に恵まれました。折しもあと三日で元号が変わろうという4月28日のこと。
こんな時に人前でお話しする機会を得るなどということはめったにないこと。何か記念になるようなことをお話ししたいなあと思ったのですがなかなかそれが思いつきません。そして思案の末ようやく考え付いたのが「リセットとリニューアル」というテーマ。

元号が変わる。これは普通の暮らしの単なる延長だろうか、それとも私達の中で何かが変化するきっかけになるのだろうか。そんなことから思いついたテーマ。
何も変わらないとしたらなぜ変わらないのだろう?何かが変わるとしたらそれは私たちの中で何かがリセットされるから?それともリニューアルされるから?そんなところから話を進めてみたいと思ったのです。

実際は平成31年4月30日23時59分59秒から1秒経つと令和元年午前0時となるだけで私たちの中ではただ単に時が動いたというだけで何の変化も起こらないわけなのですが、この変化をきっかけに心の持ち方を変えることはできるのではないか、それがリセット、あるいは、リニューアル。
では。それはどちらなのだろうか、と。

でも、それを考える前に私は具体的な例でリセットとリニューアルについて考えてみることにしました。

例えば車や家電製品。マイナーチェンジがリニューアル、モデルチェンジがリセット。でも、なんだかすっきりしません。
そんな折、ある新聞コラムでこんな記事を目にしました。
それは日本の暦がとんでもないリセットをされた時期があったという記事。
時は1872年(明治5年)12月3日。
それまでわが国が採用していた太陰太陽暦から世界共通の太陽暦に暦を改めるということで、この日から1873年(明治6年)になったという話。
建前は日本の国際化という意味もあって暦も太陽暦を採用しようということだったらしいのですが、本心は公務員の給料(月給)カット。
それまでの太陰太陽暦では19年に1度うるう月というのがあってこれに当たる年は13か月分給料を支払わなければならなかったのです。明治5年、この年もそんなうるう月のある年だったそう。
ただでさえ逼迫している国家財政をどう立て直すか。そんなときの1手が暦の転換。12月3日から太陽暦を採用し明治6年、つまり新年にすれば前年度の1か月分と12月分の公務員の給料は支払わなくともよい。そう考えたお役人は12月は日給とし、うるう月の給料は支払わないということで急場をしのいだ?かどうか・・・・。

いずれにしてもこれは私たちの暮らしにとっても大きなリセット。
それに比べると昭和から平成に移った1989年1月8日はいわば暦のリニューアル。
なんとなくこの話を引き合いに出して「リセット」と「リニューアル」、腑に落ちたような気がしたのですが・・・・。

さて、東洋はり医学会での話のことですが・・・・。
私は、令和を機に会員は本会がその柱とする経絡治療という治療法の基礎基本をもう一度見直す機会にしてほしい(リニューアル)、ちょっと本会の学術のうわべだけをかじっただけで「ああ、この治療法もだめだ」とまた他の学会をウインドーショッピングする(リセット)ようなことはしてはいけないというお話をさせていただきました。
そして、本欄をお読みいただいている方、特に心の病で悩んでいる方にはこんな話をさせていただき今回の結びとしようと思います。

「令和」という元号の変わり目を機に自分の生活や考え方、気持ちなどを見直し、新たな自分で臨んでみる、そんなふうに暮らしを変えてみたらどうでしょう、という提案です。

案外自分の生活習慣はマンネリ化しているかもしれない。だから「健康のために15分ウォーキングをしてみよう」、「ラジオ(テレビ)体操にチャレンジしてみよう」、「11時に寝て7時には必ず起きてみるという規則正しい生活に心がける」、などなどなんでも結構です。
でも、心に悩みを抱えている人はその第1歩を踏み出すことが難しいのですよね。それが多くの患者さんを診ていてわかることです。
なので私はそのきっかけに1日とか、月とか、年とか、元号の変わり目を使ってみたらどうでしょうと考えています。
例えば1日悶々と過ぎてしまったと思う方、翌日から何かを始めたらどうでしょう。
朝が苦手だという方、何かを始めるのは月曜のお昼からでもいいんです。それがだめなら月の初め。それもだめなら立春とか立夏とかといった暦の季節の初め、年の初め、年度の初め(4月1日)などもいいですよ。とにかく何らかのきっかけで自分をリニューアルしてみる。
もし計画が実行できなくともそれを悔やまない。小さなことでもいいから新たにできたことがあったらそれを肯定し評価する。
これがとても大切なことではないかと思うのですがいかがでしょう。

こんなちっぽけな提案ですが私が、実行していることがあなたの生きるヒントになれば嬉しく思います。
でも、もし、どれも何度もチャレンジしてもうまくいかないからといってリセットはいけません。
ここでいう「リセット」とは命を絶つこと。
決して、命を絶ってまた新たな人生をやり直そうなどと考えてはいけません。

心に悩みを抱えておられる皆さん、明日をよりよく生きるために自分を「リニューアル」することを考えていただければと願っています。

はり灸はあなたのリニューアルを促す治療法です。
何か気分がすぐれない、からだの調子が今一つ、やる気が起こらないなどで悩まれているあなた。どうも考えがマイナス思考に傾きがちなあなた。どうぞ一度私たち経絡治療を行っている治療院にご相談にいらしてみてください。
私達経絡治療家はきっとあなたの強い味方になるはずですから・・・・。