CNNで私たちの治療の様子が放送かも?

CNNから取材依頼がありました。
CNNといえばだれもが知っている世界最大のニュース専門チャンネル。
最近ではトランプ大統領にまず最初に敵視されたマスメディアとしても御なじみな放送局でもあります。
そのCNNが日本のはり灸について番組の中で取り上げたいので是非取材をということでした。
もちろん私の治療室を取材したいということではありません。
私が所属する東洋はり医学会に対しての依頼です。

発端は海外にも40近い支部を持つ本会北米支部へのこんな依頼から始まりました。

「今朝、北米支部にCNNのあるプロデユーサーから連絡が入りました。
内容は、日本の鍼灸、特に全盲の鍼灸師、東洋はりの取材を日本で希望。、
そして東洋はりの治療を日本で受けたいとの希望で、日本の連絡場所を教えていただきたい、というものでした。」

東洋はり医学会はもともと視覚障害を持つ鍼灸師が集まって発足した団体。
世界の先端医療をリードする国の一つであるアメリカにとっては、視覚障害のある鍼灸師がその一翼を担っているということは神秘以外の何物でもなかったのかもしれません。

レポーターはドクターサンジェイ・グブタ。
アメリカでは知る人ぞ知るお医者さんだそうで、アメリカ国内でもあらゆる医療関係の課題をレポートしているとのことです。

ドキュメンタリー撮影スタッフが日本に滞在したのは十日ほど。
そのうちの7月31日、谷内本会副会長の治療室で撮影が行われました。

取材に協力したのは副会長ご自身と3,4名の全盲会員。
撮影は朝の10時ごろから午後の4時ごろまでとかなりの時間を要したようです。
「世界に私たちの治療の素晴らしさを伝えるため」と、この日を休業にしたり緊急性のない患者さんをお断りして協力を惜しまなかった会員たち。
さて、本当に私たちの意は伝わったのかどうか・・・・。

参加者に話を聞くとーー
やはり視聴者を意識したテレビ向けの顔と、何でも自分の国に会うような味付けをしてしまうアメリカ的体質がよく出た取材になったようです。

わたしたちが行うはり灸は患者のからだを巡る気を伺いその気を調整するという微妙な操作を行うため、その手さばきも極めて細かなものです。
それはテレビ移りも悪くなかなか視覚に訴えるものにはなりません。
そのことが十分伝わっていなかったとみえ、撮影においてはやはり大きなパフォーマンスが要求され、患者にもこちらが意図しない驚くような変化を期待していたようです。
例えば今まで立つこともできないような患者が突然スタスタと歩き出すといった映像を期待していたようでした。

映画などによくみられるのですが、その国の持っている文化的思想的背景があって作品が出来上がっているものも多いのに、自国の価値観でストーリーを勝手に作り替える。
アメリカでしばしばみられるこんな現象が今回も優位に働いたようです。

科学万能の社会、薬とサプリメントが当たり前の社会。
こんな状態が蔓延する中ではり灸で人を癒すなどと言うことはまさに神秘。
視覚障害者が医療に携わるなどということは考えも及ばないこの国ではその視覚障害者がはり灸で人を癒しているなどということは文字通りアンビリーバブルなのかもしれません。

東洋医学の「和」の思想とか「中」の思想、それに「気」の考え方なども充分反映された番組になればよいのですが・・・・。

放送は来年春ごろとか。
日本でもよくあるニュース番組の「特集」のコーナーで10分程度取り上げられるとか。
ひょっとしたらネットで見られるかもしれないと期待しています。
そして視覚障害者がはり灸で人を癒している現実がミステリアスでもアンビリーバブルでもない、3千年の伝統に裏打ちされた思想と技術であることをしっかり伝えられることも。