ワンフォーオール

「ワン・フォー・オール、オール・フォー・ワン」。これはフランスの作家アレクサンドルデュマの「三銃士」で使われ広まったとされる言葉です。
意味は「一人はみんなのために、みんなは一人のために」と訳されることが多いそうです。

ところがこの言葉、別の意味に解釈した人がいます。
それは惜しくもこの10月20日53歳の若さで世を去ったミスターラグビー平尾誠二さん。

平尾さんによると「一人はみんなのために、みんなは一つのために」と解釈するのがよいというのです。(平尾誠二「理不尽に勝つ」(PHP研究所))
ここで言われている「一つ」とはおそらく「勝利」という目標を意味していると思われます。

私はこの1文を読んでふとあることに思い当りました。
もしこの解釈を私たち一人一人に当てはめたら、と。
私たちはできることなら一生健康でありたいと願っています。
そしてその願いをかなえるために一人一人の生命体が日々活動しています。

私たちのからだの中での「一人」とは60兆とも100兆ともいわれる細胞一つ一つと考えることができます。
「みんな」とはその細胞が集まってできた私たちのからだ全体であるといってよいでしょう。

つまり私たちの一つ一つの細胞は集まって私たちのからだ全体を作り私たちのからだは生命力を強化し、健やかな人生が送れるよう働いているのです。
だから私たちの生命活動を脅かすようなウイルスや細菌、がん細胞などが体を蝕み始めるとこれを全細胞が一丸となって排除しようとするのです。

私たちが行っているはり治療。
皆さんに施すはり数はそんなに多くありませんし、刺激はわずかです。
しかし、一つの細胞に与えた刺激は体全体に広がり、その刺激を受けた体は生命活動を活発にし、健康な日々のために働きます。

ちょっとあちこちが痛い、体の調子が何となく良くない、毎日気分がすぐれない。
そんな症状でお悩みのあなた、一度私たちが行う経絡治療というはり灸治療においでになりませんか。
そして気になるような症状はないのだが、というあなたも、より健やかな日常を過ごすために経絡治療を受けてみませんか。

電話、メールでのご相談をお待ちしています。

「忠臣は二君に仕えず」

1997年(平成9年)8月29日、私はいつものように行きつけの居酒屋で週末を楽しんでいました。
そんな折いつもの常連客がこんな話を持ち掛けてきました。
「先生、イヌを飼わないかい、ラブラドール。訓練次第では盲導犬にもなるかもしれないしさ。」

あまりにも急な話。イヌなど飼ったことのない私にとっては降ってわいたような話。即座の返事などできるわけがありません。
とりあえず妻を呼び「とにかく遭うだけ遭ってみようか」ということにはしたのですが・・・・。

そして翌日。「遭うだけ遭ってみる」つもりは、母親の後をゆったり追いかけるぬいぐるみのような白い子犬を見た瞬間にもうダメ。
グレートピレニーズ犬、メルとの暮らしの始まりです。

その日から我が家にはファミリーでハッピーな日々がやってきました。
それは足掛け14年続きました。

史記』に「忠臣は二君に仕えず、貞女は二夫を更えず」という一節があります。
真心こめて使える臣下は決して主人を変えず、貞節を守る女性は二人の夫に仕えるようなことはしないといういみです。

イヌは群れで行動する動物です。
飼い主に忠実であるのもその特徴です。
まさに「忠臣は二君に仕えず」を地でいっているようなものです。
もっともメルの場合、「貞女は二夫を更えず」というわけにはいかなかったようで、その時期になるとオス犬を前にシッポを右に倒したり左に倒したりしていましたが・・・・。
そんなメルとの楽しかった日々と忠義心を大切にしたく、彼女の死後新たに犬を飼うということはしませんでしたし、そういう気にもなりませんでした。

「ドクターショッピング」というのがあります。
自分の抱えている症状をもっと理解してほしい、もっと自分が納得できる治療法があるはずだとあちこちのお医者さんを訪ね歩く方々の行動を指し示した言葉です。

ドクターショッピングをする人の中にはどこかで「あの先生は良い先生だ」という情報を得ると日本全国はおろか、世界各地にまで足を運ぶ方々もいます。

患者さんの中には現時点ではほとんど治療方法がないという難病を抱えておられる方もいます。
セカンドオピニオンを受けることで治療に対する考え方が広がる場合も多くあります。
こういう方々はドクターショッピングをしているわけではないのでこの話からは除外です。

私が考える「ドクターショッピング」というのは、ベターな対応と治療を行うお医者さんを求めて医療機関を受診するのではなく、限りなくベストの対応と治療を求めてあちこちのお医者さんを巡る人たちのことです。
ベストには限界がありません。
だからもっと私のことをよく理解してくれるお医者さんがいるはずだ。
もっと良い治療があるに違いない。
それがドクターショッピングになるのです。

私はドクターではありませんから患者さんからのドクターショッピングの対象になることはありません。でも、鍼灸治療院でも同様なことは起こっています。

よく、「あちこちの鍼灸院に行ったがいっこうに症状が良くならない。ホームページを見たらここなら良いのではと思い来院しました。」という患者さんがお見えになります。
そういった患者さんには私もベストを尽くしますが「我、術未だ至らざる」で長続きしません。

長くおいでいただいている患者さんは私に、よりベターな対応と治療を求めている方々です。
長くおいでいただくと文字通り「気心が知れる」ようになる。
つまり気の交流が進んでより早く患者さんの現す症状の変化に気づきより良い治療に導けるようです。

患者さんは私の臣下でもありませんし、私は患者さんの君主でもありません。
しかしお互いに「忠臣は二君に仕えず、貞女は二夫を更えず」という考え方を持ち続けているうちは、患者さんも良い方向に心身が養われますし、私の技術の向上の日々も続くことと確信しています。

200805312011

今までどおり

先日心を一にする鍼灸師が集う東洋はり医学会第11回国際指導者研修会に参加してきました。
こういう集まりは研修内容はさることながら、そのあとの飲み会に楽しい話や参考になる話が飛び出すもの。
今回もあるはり灸師の方がこんな話をしていたのに耳が留まりました。

<うちにはがん患者の方が結構お見えになります。
初期の方もおられれば末期がんで緩和ケアの一端としてはり灸を求めてこられる方もおります。

先日お見えになった方。
この患者さんは胃がんの腹腔鏡手術で胃の一部を切除された方でした。
早く仕事に復帰したいとのことでわたくしの治療室を訪れました。

その患者さん、治療を行っているうちにだいぶ元気になられました。
そんなある日、雑談交じりにこんな話をしてくれました。

「実は手術の終わったあとお医者さんがにこやかにこう言ってくれました。
『悪いところは全部切除しましたから、これで今までどおりの生活ができますよ。』と。
私はまた元気に働けるのだなあと思うととてもうれしくなりました。」

私はこの話を聞いて少し変だなあと思ったものです。

がんにはもちろん遺伝的要因で発病するものもあります。
しかし、生活習慣やそれに伴うストレスが引き金となることも多々あります。
もしそれが原因だったとしたら・・・・・・・。
「今までどおりの生活」をしていたのではまた再発する危険性があるのではないか、と。

がんの再発を予防したかったら今までの生活を見直し、食事や睡眠、時間の使い方、日々の過ごし方など今までと違った暮らし方を考え、実践していかなければならないのではと・・・・・。>

「なるほどなあ」
私は飲みかけのビールのコップを片手に、うなづきながらこの話を聞いていました。

お医者さんには悪気はありません。
きっと患者を元気づけたくて
「これで今までどおりの生活ができますよ。」
こう言ったのだと思います。
だからこの逸話を軽く受け流してしまえばそれで話は終わりです。
でもちょっと深読みするとこのはり灸師の言う通りだなあと思いました。

私たちには長年培ってきた一定の生活のリズムとか生活パターンというのがあります。
私たちはこの生活のリズムや生活パターンを繰り返していればいつまでも健康でいられる。
そう思いがちですがそうとは限りません。
なぜなら、私たちのからだは日々老化していきます。
それに伴い多少の体調の変化をもたらすということはやむを得ないことだからです。
しかし、大きく健康を害するような事態の発生は多くの場合、やはりそれまでの生活習慣がどこか誤っていたということを意味します。
高血圧、心臓病、軽い脳こうそくなど何かの病気を抱えたりその疑いを示唆されたりするということは生活習慣を見直せというからだからの警告です。
私たちはその警告に素直に耳を傾ける姿勢も必要です。

病気にならないために今日からサプリメント。
それもよいでしょう。
けれどちょっとこちらを振り向いてください。
はり灸もあなたにとっての老化や病気を防ぐ強い味方になります。
もっともあなたに自分の生活を見直そうという気持ちがなければ、私たちはり灸師はあなたと手を携えて明日を生きることはできないのですが・・・・・。

なるべく長い時間、ベストコンディションで日々を生きたいと願っているあなた。
一度私たちに相談してみませんか。
きっと私たちが行うはり灸治療はあなたの明日のよりよい健康のお役に立ちます。