東京五輪

2016年8月22日(日本時間)リオデジャネイロで開かれた第31回オリンピックが閉幕した。
別の言い方をすれば東京オリンピック2020がスタートを切ったということができる。

はり灸師である私は患者といろいろな話をする。
その中にとても印象に残ったこんな話がある。
患者のそのつぶやきにちょっと耳を傾けてみたい。

「ブラジルでやるオリンピックはいいよねえ。
だって向こうは今冬から春に向かう時期だろう。
気温だって20度前後だっていうじゃないか。
選手たちは自分たちの力を目いっぱい発揮できる環境にあるよな。
でも東京五輪を見てごらん。
7月24日から8月9日だぜ。
暑い真っ盛り、いや、蒸し暑い真っ盛りだぜ。
なんでこんな時期にオリンピックをやるのかねえ。
やっぱり4年に1度のスポーツの祭典だもの。
最も自分たちの力が発揮できる環境、ベストコンディションで競技に取り組める環境でやらせてやりたいよね。
日本でやるんならやっぱり前と同じ秋かなあ。
なぜその時期にオリンピックがやれないんだろうって思ってたら、何でもアメリカのテレビ局の思惑があるっていうじゃないか。
10月とか11月のアメリカは大リーグも終盤からワールドシリーズへ。
アメフトも始まるしNBAも開幕する。
1年で1番スポーツが盛り上がる時期なんだってなあ。
そんな時期にオリンピックをやってもらってもテレビ局は高視聴率が取れない。
高視聴率が取れないということはスポンサーも付きにくい。
だからオリンピックをやるのはみんなが観てくれる可能性の高い夏場がいいんだっていうんだけど・・・・・・。
言ってることは分かるんだけども、ある意味勝手な言い分じゃないかなあっても思うんだよね。
だってオリンピックって世界のアスリートが一堂に会する場だろう。
それだったら開催国で一番選手が活躍できて記録も望めるような環境でやらせてやりたいじゃないか。
それをある国の事情やテレビ局のご都合で開催日を決めるのはなんか変だなあって思うんだよね。
これってオリンピックに参加する選手をゲームのコマかゲームに使うチップみたいに考えてねえ?
オリンピックはスポーツの祭典、平和の祭典なんて言うけれど、何か人間の原点みたいなものを忘れてるんじゃないかなあって思うんだけど……。
先生どう思う?」

私は「まったくその通りですね。」とうなずいた。

田舎の小さな街の鍼灸治療院の片隅でこんなことをつぶやいても何も状況が変わるものではない。
が、「よくぞ言ってくれた」と心では患者に喝采の拍手を送った。

今までどおり

先日心を一にする鍼灸師が集う東洋はり医学会第11回国際指導者研修会に参加してきました。
こういう集まりは研修内容はさることながら、そのあとの飲み会に楽しい話や参考になる話が飛び出すもの。
今回もあるはり灸師の方がこんな話をしていたのに耳が留まりました。

<うちにはがん患者の方が結構お見えになります。
初期の方もおられれば末期がんで緩和ケアの一端としてはり灸を求めてこられる方もおります。

先日お見えになった方。
この患者さんは胃がんの腹腔鏡手術で胃の一部を切除された方でした。
早く仕事に復帰したいとのことでわたくしの治療室を訪れました。

その患者さん、治療を行っているうちにだいぶ元気になられました。
そんなある日、雑談交じりにこんな話をしてくれました。

「実は手術の終わったあとお医者さんがにこやかにこう言ってくれました。
『悪いところは全部切除しましたから、これで今までどおりの生活ができますよ。』と。
私はまた元気に働けるのだなあと思うととてもうれしくなりました。」

私はこの話を聞いて少し変だなあと思ったものです。

がんにはもちろん遺伝的要因で発病するものもあります。
しかし、生活習慣やそれに伴うストレスが引き金となることも多々あります。
もしそれが原因だったとしたら・・・・・・・。
「今までどおりの生活」をしていたのではまた再発する危険性があるのではないか、と。

がんの再発を予防したかったら今までの生活を見直し、食事や睡眠、時間の使い方、日々の過ごし方など今までと違った暮らし方を考え、実践していかなければならないのではと・・・・・。>

「なるほどなあ」
私は飲みかけのビールのコップを片手に、うなづきながらこの話を聞いていました。

お医者さんには悪気はありません。
きっと患者を元気づけたくて
「これで今までどおりの生活ができますよ。」
こう言ったのだと思います。
だからこの逸話を軽く受け流してしまえばそれで話は終わりです。
でもちょっと深読みするとこのはり灸師の言う通りだなあと思いました。

私たちには長年培ってきた一定の生活のリズムとか生活パターンというのがあります。
私たちはこの生活のリズムや生活パターンを繰り返していればいつまでも健康でいられる。
そう思いがちですがそうとは限りません。
なぜなら、私たちのからだは日々老化していきます。
それに伴い多少の体調の変化をもたらすということはやむを得ないことだからです。
しかし、大きく健康を害するような事態の発生は多くの場合、やはりそれまでの生活習慣がどこか誤っていたということを意味します。
高血圧、心臓病、軽い脳こうそくなど何かの病気を抱えたりその疑いを示唆されたりするということは生活習慣を見直せというからだからの警告です。
私たちはその警告に素直に耳を傾ける姿勢も必要です。

病気にならないために今日からサプリメント。
それもよいでしょう。
けれどちょっとこちらを振り向いてください。
はり灸もあなたにとっての老化や病気を防ぐ強い味方になります。
もっともあなたに自分の生活を見直そうという気持ちがなければ、私たちはり灸師はあなたと手を携えて明日を生きることはできないのですが・・・・・。

なるべく長い時間、ベストコンディションで日々を生きたいと願っているあなた。
一度私たちに相談してみませんか。
きっと私たちが行うはり灸治療はあなたの明日のよりよい健康のお役に立ちます。

積極的平和

8月15日は終戦記念日。
その日から71年。
戦争をまったく知らない私でも晴天の暑い日中で玉音放送を聞いたという話を耳にするたびにその日の光景が思い浮かびます。

とはいってもそのようなイメージを持つのは日本人である私たちだけで、世界の第2次大戦の終結はこの日ではないようです。

1945年9月2日、東京湾上のアメリカ戦艦ミズリー号内で行われた降伏文書への調印をもってこの日とする国が多いようなのです。

ところで、最近は終戦の日を機に平和について考える番組が多く放映されるようになりました。
そこで私もちょっと平和について考えてみたいと思います。

ノルウェイの兵和学者ヨハン・ガルトゥング博士は平和を積極的平和と消極的平和に分けこう定義しました。

戦争のない状態を平和と捉える「消極的平和」に対し、貧困、抑圧、差別など構造的暴力のない状態を「積極的平和」と捉えたのです。

これに対して安倍首相はガルトゥング博士同様平和を積極的平和主義と消極的平和主義という視点から次のように考えたようです。

消極的平和主義とは第二次大戦直後の日本の平和主義である。
贖罪を最大の目的とし、二度と同じ過ちを犯さないことを誓うことによって完結する平和主義である。
しかし、21世紀の日本の平和主義は、世界の不正と悲惨を直視し、不安と恐怖を理解し、その除去のために積極的に貢献しようとする積極的平和主義でなければならない。(総合研究開発機構(NIRA)2001年3月「積極的平和主義を目指して考える」報告書から)

なんだか話が難しくなったようです。
それにこの話、本欄にはあまりなじまないようにも感じます。
でも、ちょっと言葉を置き換えて考えてみたらどうでしょう。
平和を心身の健康な状態、私たちのからだを蝕む細菌やウイルス、それに環境の変化を侵略者と考えたら・・・・・・・。
そして国家を私たちのからだになぞらえ平和を健康に置き換えてみると、これを守る方法としてあなたは積極的健康か積極的健康主義かのどちらを選ばれるでしょうか。

ここでいう積極的健康主義とは、
「世界の不正と悲惨を直視し、不安と恐怖を理解し、その除去のために積極的に貢献しようとする」姿勢のことです。
つまり細菌やウイルスなどから身を守るため強い体を作るということになるでしょうか。
栄養剤、疲労回復剤、睡眠導入剤、サプリメントなどの常用がこれに当たるでしょうか。

これに対し積極的健康とは、
「貧困、抑圧、差別など構造的暴力のない状態』を作ることです。
つまり時間をかけて少しずつ心身のアンバランスを調整していくことです。

私たちが行う東洋医学的治療は積極的平和ならぬ積極的健康を維持、継続できるよう患者様と一緒に心と体の平和を考えていく治療法です。

時流は国家の動き同様はり灸業界も積極的健康主義の方向にあります。
しかし私はこう思います。
今こそ積極的健康が見直されなければいけない時なのでは、と・・・・・。