「頭痛」で見えられた患者様は・・・・・・・。

ある日20代半ばの長身やせ型の女性が来院されました。

 お話を伺いますとーー

B子さんは二十歳ぐらいから時々激しい頭痛に襲われていたとのこと。
それは3ヵ月周期ぐらいで突然やってきていたそうです。
頭痛の起こる日は、朝から何か気分がすぐれないなあ、頭がちょっと重いかなあと思っていると、突然ズキンズキンというような激しい頭痛に襲われ目の前が真っ暗になり、めまい、吐き気などを感じ、仕事を中座することがしばしばだったとのことです。
そんな日のB子さんは自宅の寝室を暗くし、数時間休むようにすると少しずつ頭痛は改善されるとのことです。
いつまたあの激しい頭痛に襲われるかと思うと、仕事にも集中できず、積極的に友人と付き合ったり好きな旅を楽しむこともできません。

B子さん、「頭が痛いということは何か大きな病気の前触れではないか」と心配になり脳神経科で検査もしてもらったそうです。
が、特に脳に異常は認められなかったとのことで「痛みが出た時にはこれを」と医師に頭痛薬を処方され帰ってきたそうです。

でもB子さんの不安は募るばかり。
別の症状で私のところに通っている母親の勧めもあり、治療を行うこととなりました。

B子さんに触れてみるとーー

頸から肩、腰の方まで強いこりが認められました。
特に頸の前側にある胸鎖乳突筋(きょうさにゅうとつきん)という筋や側頸部に強いこりを認めました。

お話を伺い、体全体を念入りにチェックした感じでは肝臓のバランスが他の臓器に比べ悪いように思えました。
肝臓は現代医学でも我々が生きていくために必要な様々な働きを持つ重要な臓器です。
もちろん東洋医学でも同様です。

東洋医学では肝臓は「春」と関係があるといわれています。
春にはすべての生き物が伸び伸びと活動します。
雑草などでもちょっと見ぬ間にあっという間に背を伸ばします。
このような成長のエネルギーを持つのが肝臓だといわれるのです。
私たちのからだの中でもこのエネルギーが働き、血液循環をはじめ、ホルモン分泌、精神活動なども活発になっていくのです。
ところがこの肝臓が思うように働かないと伸びる力が弱いとか、伸びようとしてもどこかでつっかえ滞ってしまうなどという現症が起こるのです。
血管にこういう現象が起こるとき頭痛も発症すると考えることができます。

そこで肝臓の働きを調節するとともに他の内蔵の働きをも調和させることを目的にはり灸治療を行いました。

治療終了後B子さんの頸・肩・腰などの様子を見ると、深部にこりは残るものの、表層部はだいぶ柔らかくなりました。
特に頸の後ろや肩はかなり柔らかくなり、B子さんも「気分が楽になった」とおっしゃってくださいました。

このように頭痛の呼び水となっている頚・肩・腰のこりを緩め、肝臓の働きを調節する目的で週1回ぐらいのペースで半年ほどB子さんのはり灸治療を続けました。

B子さんが治療にお見えになったのは直前の頭痛発作があってから1ヵ月ぐらい立ってのこと。
でも、治療を始めてからもまたあの頭痛が起こるのではないかとB子さんは心配でした。

幸い最後の激しい頭痛から半年過ぎても新たな発作が起こらなかったため、少し治療間隔を開けるようにして通っていただいています。

(参考1)
・注意しなければならない頭痛
あまり頭痛を経験したことのない方が後ろ頸を中心に激しい頭痛に襲われた時には特に注意してください。
また、時折頭痛を経験される方でもいつもと違う激しい痛みを感じた時にも要注意です。
いずれもクモ膜下出血の可能性があります。
経験のないような激しい頭痛の時には迷わず専門医を受診してください。
あなたの判断がご自分ばかりでなく家族の幸福をも左右することがあります。

(参考2)
・片頭痛(偏頭痛)
B子さんのお話を伺っていると、発症時期、発作間隔やその症状などから片(偏)頭痛に似たものであるような気がします。
そこで下記に「片頭痛(偏頭痛)」についてお話しさせていただきます。

片頭痛は、片側あるいは両方のこめかみから目のあたりにかけて、脈を打つように「ズキンズキン」と痛むのが特徴です。ひとたび痛み出したら、4~72時間続きます。

・片頭痛の主な症状
1.痛み方
ときどき起こる「ズキンズキン」あるいは「ガンガン」と脈打つような痛みが4~72時間続く
2.痛む場所
頭の片側に起こることが多いが、両側のこともある
3.頻度
頭痛の起こる回数は、月に1~2回程度から、多いときには週に1~2回
4.経過
痛みは1~2時間でピークに達し、吐き気や嘔吐(おうと)を伴うことも多い
5.仕事や家事
(あまりの痛みに)動くこともできず、仕事や勉強、家事などが手につかなくなったり、能率が下がる。ひどいときには寝込んでしまうこともある
6.動くとどうなる
動くと痛みが悪化する/動くよりじっとしている方が楽
痛みの発作が起きている間は、姿勢を変えたり、頭をちょっと傾けたりするだけでも痛みが強くなる
7.痛み以外の症状
(随伴症状)頭痛に伴って吐き気がしたり、胃がムカムカすることがある
頭痛に伴ってふだんは気にならない程度の光がまぶしく感じることがある
頭痛に伴ってふだんは気にならない程度の音がうるさく感じることがある
頭痛に伴ってにおいが嫌だと感じることがある
8.前兆
頭痛が起こる前兆として、目の前にチカチカとしたフラッシュのような光やギザギザした光があらわれたり、視野の一部が見えにくくなる閃輝暗点(せんきあんてん)が出ることもある
9.頭痛の前兆
片頭痛は、「前兆のない片頭痛」と「前兆のある片頭痛」の2タイプに分けられ、前兆のある人は20~30%といわれています。
前兆のある片頭痛では、頭痛が起こる前に、いくつかの前兆がみられます。目の前にチカチカと光るフラッシュのようなものがあらわれ、視野の片側、または中心部が見えにくくなる閃輝暗点(せんきあんてん)を生じることが多いのですが、感覚が鈍くなる感覚異常、言葉が話しにくくなる失語性言語障害がみられる場合もあります。
このような前兆の多くは15~30分で消失し、続いて頭痛が始まります。