「肩こり」で見えられた患者様でしたが・・・・・・・。

長年自動車整備の仕事に携わっておられる50代半ばの中肉中背の男性がひどい肩こりを訴えて来院しました。

お話を伺いますとーー

Aさんは若いころから肩こりがあったそうです。

ここ数年は体力が衰えてきたのか仕事がきつく感じるようになり、それとともに肩こりも強くなってきたとのこと。

私のところに通っている同僚に「肩こりにははりはとても良い」という話を聞き来院したとのこと。

Aさんに触れてみるとーー

頸から肩、背中の上の方に強いこりが認められました。
特に背中の上の方、肩甲骨と背骨の間には筋状のこりが認められその部分を押すと痛みとともに頭の方に響くような感じがあるといいます。

お話を伺い、体全体を念入りにチェックした感じでは生命力と深い関係のある腎臓のバランスが崩れているように思えました。

そこで腎臓の働きを高めるとともに他の内蔵の働きをも調和させることを目的にはり灸治療を行いました。

治療終了後頸・肩・背中の様子を見ると、長年のこりが蓄積されているため深部にはまだこりが残りましたが、表層部はだいぶ柔らかくなりました。
Aさんも「肩がとても軽くなって頸が大きく回せるようになった。」と喜んで帰られました。

このように肩こりを改善する目的で週1回ぐらいのペースで半年ほどAさんのはり灸治療を続けました。

Aさんは一生懸命通われる成果もあり、来院当初から比べるとほとんど肩こりを感じることもなくなったと言います。
ただ急な仕事が入ったり忙しい時にはこりを感じることもまだあるとのこと。

Aさんに触れると頸・背中の深部のこりもずいぶん取れてきたのが分かります。

そんなある日、Aさんがこんなことを言います。

「1ヵ月半ほど前会社の健康診断を受けた。
その結果が先日返ってきた。
それによると、驚くことに、ここ10年ぐらい高いので要注意と言われていた中性脂肪が正常になった。
女房とも話したのだが、特に食事制限をしていることはない。
薬はもちろんサプリメントもとっていない。
健康のためにやったことで思いつくことはない。
新しくやったことといえばはり治療。
もしかしたらはりの効果ではないかということになったのだが・・・・・。」

はり灸には内臓の働きのバランスがうまく取れるようになると健康な状態に復するという作用があります。
Aさんの場合その作用がうまく働いたのかなあと思いお話を聞かせていただきました。

(参考)
・中性脂肪とその正常値
中性脂肪とは?

中性脂肪とは、人間の体を動かすエネルギー源となる物質で、別名「トリグリセリド(トリアシルグリセロール)」と呼ばれ、健康診断の検査結果では「TG」等の記号で表示されています。

主に食物から取得された脂質は、小腸から吸収されて血液中に入り、体内の生命維持活動に利用されますが、使い切れなかった余ったエネルギーは中性脂肪として、蓄えられます。
いわゆる、体についたぶよぶよ贅肉、皮下脂肪が中性脂肪です。

また、中性脂肪は、肝臓でも合成されており、炭水化物を多くとったり、飲酒(アルコールの摂取)によっても増加します。

中性脂肪の役割としては、前述の生命維持活動の他に、ぶよぶよの脂肪分として内臓を守り、また体温を一定に保つ働きがあります。

「中性脂肪が高いとよくない!」と言われることから、不要なものに見られがちですが、生きていく上で必要なエネルギー源ですので、ある程度の数値は必要になります。

健康診断時に計測されるのは、食事から取り込まれた中性脂肪(外因性トリグリセリド)ではなく、余分なエネルギーとしていったん肝臓に取り込まれた脂肪が再び血液中に分泌された中性脂肪(内因性トリグリセリド)の値を測ります。

ですので、健康診断は、前日8時以降の食事や飲酒を制限、または当日の朝食を抜いて受診する(検査前10~14時間は絶食にする)必要があります。再検査になる場合は、当日に朝食を摂ってしまい、外因性の中性脂肪により検査値が高くなったケース、というのが多いようです。

中性脂肪の正常値

中性脂肪の値は、血液中のコレステロールと中性脂肪値を測る脂質検査で調べることができます。
おおよその目安は、以下の通りです。

・29以下:低中性脂肪血症

・30 ~149:正常

・150~299:境界域?軽度高中性脂肪血症

・300~749:中等度高中性脂肪血症

・750以上:高度高中性脂肪血症

中性脂肪が高くなると問題になる病気

動脈硬化による狭心症、心筋梗塞、脳卒中への危険性
脂肪肝から移行する可能性のある肝硬変・肝臓がんなど

(備考1)
本欄で紹介させていただいたような患者様がすべてはり灸治療で改善されるというものではありません。
わたくし共は家庭医などのお医者様とともに皆様の健康維持、管理に参与させていただくものであります。
患者様皆様におかれましてはご自分の健康状態にいつも関心をお寄せいただくとともに、医療機関や私たちはり灸師を適切にご利用していただければ幸いに存じます。

(備考2)
本欄は患者様の許可を得て掲載させていただいているものであります。
許可のない健康情報、医療情報を本欄に載せることはありませんので安心して本院のはり灸を受けていただきたいと思います。