先日ある商売をされている患者さんがこんな話をしてくれました。
「先生、近江商人の心得として『三方よし』っていうのがあるんだけど知ってるかい。」
「何ですかそれ」と私が聞くとこう教えてくれました。
「やあ、こういうことらしいんだねえ。
売り手も買い手もそして世間もみな良しというような商売をしなさいっていうことなんだそうだ。
私はいつもこれを心掛けて仕事をしてるんだけどね、なかなかそれが難しいんだよね。」
「それって具体的にはどういうことなんですか。」と私。
「ああ、それね。
売り手、つまり私どもも満足する。
買い手、つまりお客様も満足する。
そしてこれが一番難しいんだけれど、私たちの商売を通じて社会に何らかの貢献するっていうことだな。」
そんな話をしているうちに治療は終わったのですが・・・・・。
あとでこの話をじっくり考えてみると確かに商売をしていて私もあなたも世の中も皆が満足するような商売はとても大変なことだと気付きました。
そしてそれは商売にだけいえることではなく、常にだれかを通じて世の中と対峙している私たちの日常や仕事でも心掛けなければいけないことだとも。
ところで、私がかかわっているはり灸という仕事。
私だけが患者さんの病苦を取り除いたような気になっているだけで本当においでいただく皆さんに喜んでもらっているだろうか。
世の中に何らかの形で貢献しているだろうか。
そう自問自答すると少し反省でした。
とはいってもこの仕事、病から1日も早く抜け出したいという方にはり灸を通じて笑顔を取り戻して差し上げることができる。
それだけの優れた技術を持てば十分社会にも貢献できる素晴らしい仕事だと思います。
ただ、私にそれだけの技術力があるかどうか、そこが反省点なのですが・・・・・。
商売だけではなく、世の中自分だけが満足すればそれでよいという風潮が蔓延している今日、もう一度近江商人の心得「三方良し」、みんなで考えてみたいものです。