積極的平和

8月15日は終戦記念日。
その日から71年。
戦争をまったく知らない私でも晴天の暑い日中で玉音放送を聞いたという話を耳にするたびにその日の光景が思い浮かびます。

とはいってもそのようなイメージを持つのは日本人である私たちだけで、世界の第2次大戦の終結はこの日ではないようです。

1945年9月2日、東京湾上のアメリカ戦艦ミズリー号内で行われた降伏文書への調印をもってこの日とする国が多いようなのです。

ところで、最近は終戦の日を機に平和について考える番組が多く放映されるようになりました。
そこで私もちょっと平和について考えてみたいと思います。

ノルウェイの兵和学者ヨハン・ガルトゥング博士は平和を積極的平和と消極的平和に分けこう定義しました。

戦争のない状態を平和と捉える「消極的平和」に対し、貧困、抑圧、差別など構造的暴力のない状態を「積極的平和」と捉えたのです。

これに対して安倍首相はガルトゥング博士同様平和を積極的平和主義と消極的平和主義という視点から次のように考えたようです。

消極的平和主義とは第二次大戦直後の日本の平和主義である。
贖罪を最大の目的とし、二度と同じ過ちを犯さないことを誓うことによって完結する平和主義である。
しかし、21世紀の日本の平和主義は、世界の不正と悲惨を直視し、不安と恐怖を理解し、その除去のために積極的に貢献しようとする積極的平和主義でなければならない。(総合研究開発機構(NIRA)2001年3月「積極的平和主義を目指して考える」報告書から)

なんだか話が難しくなったようです。
それにこの話、本欄にはあまりなじまないようにも感じます。
でも、ちょっと言葉を置き換えて考えてみたらどうでしょう。
平和を心身の健康な状態、私たちのからだを蝕む細菌やウイルス、それに環境の変化を侵略者と考えたら・・・・・・・。
そして国家を私たちのからだになぞらえ平和を健康に置き換えてみると、これを守る方法としてあなたは積極的健康か積極的健康主義かのどちらを選ばれるでしょうか。

ここでいう積極的健康主義とは、
「世界の不正と悲惨を直視し、不安と恐怖を理解し、その除去のために積極的に貢献しようとする」姿勢のことです。
つまり細菌やウイルスなどから身を守るため強い体を作るということになるでしょうか。
栄養剤、疲労回復剤、睡眠導入剤、サプリメントなどの常用がこれに当たるでしょうか。

これに対し積極的健康とは、
「貧困、抑圧、差別など構造的暴力のない状態』を作ることです。
つまり時間をかけて少しずつ心身のアンバランスを調整していくことです。

私たちが行う東洋医学的治療は積極的平和ならぬ積極的健康を維持、継続できるよう患者様と一緒に心と体の平和を考えていく治療法です。

時流は国家の動き同様はり灸業界も積極的健康主義の方向にあります。
しかし私はこう思います。
今こそ積極的健康が見直されなければいけない時なのでは、と・・・・・。

リセットⅡ

 前回は、人生や日常をなかなかリセットできない中壮年以降の方や、心の悩みをお持ちの方で自分をリセットすることが難しい方に、それを行わずに自分を見つめなおすヒントを少しお話ししました。
 今日はリセット可能な方々が、陥りやすい落とし穴についてお話します。

 人生をリセットする、日常をリセットするという行為はゲーム世代の特権のように思われがちですが、実は明治時代から行われていた節があります。 
 それは明治の文豪のこんな1篇に見て取れます。

 森鴎外の小説「雁」に登場する高利貸し末造の妾・お玉は医学を学ぶ大学生の岡田に慕情を抱く。が、その思いは実ることなく終わる。
 小説はこれで終わるのですが、どこかで見聞きしたドラマのラストシーンはこうでした。
 岡田にもう二度と会えないことを知ったお玉は不忍池のそばで日傘をくるくる回しながら笑顔で歩いていくのです。
 ここに当時のしたたかな女性の姿を見る人もいるかもしれませんが、今流にいえばお玉は傘を回しながら人生をリセットした、私にはそうも思えたのですが・・・・・。 

 積極的に生きようとする、前向きに生きようとする、そういう視点でみればリセットという考え方や行為はとても有益なものです。しかし、私たちには決してリセットできない場合もあることを承知しておかなければなりません。それは犯罪を犯したときなどです

 自分にはどうしてもリセットできない。けれどだれが見てもリセットした方が幸せになれるかもしれないことはもう一度1からやり直してみる価値があるものです。しかし、犯罪は違います。自分ではリセットすればやり直しがきくと思っているかもしれませんが、犯罪行為はだれが見ても決してリセットしてはいけないものであり、だれも幸せになる行為ではありません。きくところによると最近犯罪まがいの行動もリセットすればまたやり直せると思っている人たちが増え始めているとか。

 自分だけが人生や日常をリセットできないでいるのも困ったものですが、何でもリセットすればまた1からやり直せると考える人たちも問題なのです。
  
 ところで、私たちの健康についてはどうでしょう。
 ちょっと体調が悪いと薬を飲む、健康を維持したくてサプリメントを愛用する。こうして自分の不健康な状態や健康への不安をリセットしようとみなさん思っていないでしょうか。

 薬の服用は体調が一時的に良くなることも確かです。しかし、服用をやめると元の状態に戻ってしまうということもよくあります。サプリメントも飲み始めはとても元気が出たような気がしますが、続けているうち最初の時ほど大きな変化を感じなくなるという場合もあります。
 そう考えると薬やサプリメントは自分の体をリセットしたのではないのかもしれません。

 では私たちが行っている鍼灸はどうでしょう。
 鍼灸の中には「ツボ療法」といって何か症状があるとそれに効果があるといわれてきたツボにはり灸を施すことで苦痛を改善させようとする方法があります。それも鍼灸治療の一分野ですからその効果を否定するものではありません。しかし、これも一時的に症状を改善するだけで根本的な対処法とはいえません。

 これに対し、私たちが行っている「経絡治療」という方法は、心身を全体としてとらえ、五臓六腑や体全体を巡っている経絡という見えない経路のバランスをとることで健康を維持しようとするものです。そのため、局所の症状に対しての即効性にはやや難点がありますが、確実に体調を整えていきます。

 二十歳を過ぎた体は日々確実に衰えていきます。したがって10代の若さを取り戻すことはできません。でも、確実に健康を維持することはできます。のみならずアンチエイジングにも大きく貢献します。

 1回おいでいただいただけではその効果を十分ご理解いただけないかもしれませんが、継続的に治療することにより心身の変化を実感することができます。

 健康でありたい、アンチエイジングにチャレンジしたい。そんなあなた。
 私のところでなくとも結構ですが、「経絡治療」を看板にしている治療家の下で、ぜひ健康管理のための鍼灸を受けていただければと思います。

リセット

 前回私はこの欄で何かに行き詰ったらやり直せばよいではないかと書きました。
 物事がうまく運ばない、日々の暮らしに充実感がない、なんだかやる気が起こらなくて自分がいやになってしまう・・・・・。そんなときは何かのきっかけを見つけて再度人生と日常のプログラムを作り直してみたらどうだろうという内容でした。
 これを現代流にいえば人生や日々をゲームにたとえ、一度「ゲームオーバー」にしてリセットし再度やり直してみたらという提案です。
 世の中をある程度達観したところのある若い世代にとってはこれはそんなに難しいことではありません。でもある程度の年齢以上の人、気の小さい人、気の弱い人、まじめで繊細な心の持ち主にとっては自分の歩んできた人生や日常をリセットするということはとても勇気のいることです。
 実は私昨年12月の始め、神田神保町の居酒屋「白木屋」で置き引きの被害に遭いました。1日の疲れと安堵感もあり店への信頼も深かったし来店している客も少なかったので、何気なく席の近くに荷物を置いたのが悪かったようです。いつもは慎重なはずの自分が当日はなぜそんな行為に及んだのか、気の小さな自分はその夜一睡もできませんでした。そしてしばらくは最低限のことしかできず食事も満足にのどを通りませんでした。そんなときに効果を発揮したのは家族の励ましと時薬(日にち薬)でした。「いつまでも悔やんでいても仕方がない」とてきぱきと早急に携帯電話など必要なものの復元に走ってくれた家族。・・・・・・・・。やがて時の経過は徐々にですが落ち込んだ私の心を元に戻してくれました。メールや電話を通じて、あるいは、直接知人友人に私の体験を話すことも心の回復を早めることになりました。
 このエピソードを読まれた方の中には「誰にでも一度や二度そんな失敗はあるものです。そんなに落ち込むほどのことではないんじゃないですか、やっぱりあなたは気が小さいんですね。」と笑われる方もいるかもしれません。
 ある出来事や一つの言葉。多くの人々にとってはそれは何気ない日常として自分の周りを通り過ぎていくものです。ところがある人にとってはその出来事や言葉が自分を大きく変えるきっかけになることがあります。その出来事や言葉に遭遇した瞬間、自分のすべてがこれで終わってしまうのではないか、自分には何の価値もないのではないかと感じたりすうのです。そのきっかけとなるのは失敗体験であったりパワハラやセクハラまがいの言葉だったり・・・・・。しかし失敗体験やパワハラ・セクハラまがいの言葉を受けても良い意味でめげない人たちもいます。
 「うつ」という状態はまじめで几帳面で繊細な人に起こりやすいといわれます。「そういう意味ではうつ」は心の持ち方の個人差によって生まれるものだともいえます。「うつ」気味な人にはこれまでのことをゲームオーバーにして、またリセットしなおせばよいのではないか。そう思われる方も多いかと思いますが、それができないのが「うつ」なのです。
 こうしたうつ状態に対して言霊療法を推奨されておられる高田明和氏は、「困ったことは起こらない」、「すべては良くなる」といつも口の中で唱えながら日々を送ると良いと著書の中で言われています。(「うつ克服の最強手段 言霊療法」NHK出版)確かに過去を振り返っても起こったことはやり直しができません。だからこういうのも自分を啓発するひとつの方法としてとても良いものです。でもその言葉を繰り返し繰り返ししながら本当に自分の心からそう信じられるようになるまでには相当の時間とエネルギーが必要です。家族の励ましも大事です。「時薬」も有効かもしれません。メールや電話を通じて、また直接、知人友人に自分の悩みや問題を話すことも心の回復を早めることかもしれません。でもうつ傾向の強い方は家族の励ましが返って心の負担になったり、時が立つにつれて悩みが深くなるのが特徴です。友人知人への連絡もだんだん億劫になりがちです。
 そんな時ひょっとしたら皆さんに光明を見出していただけるのがはり灸です。
もし、ふとそう思われたあなた。私のところにあなたのお悩みを話しにきてみませんか。とはいっても私があなたに何かアドバイスをできるわけではありません。ただあなたのお話を聞くだけ。そしてはり灸治療を行うだけです。はり灸はうつの原因となっている気の滞りを解きほぐしてくれます。全身に均等に気がめぐるようになるとあなたの心の中に何か良いアイディアが浮かんできます。そんなお手伝いをする。それが私たちが行うはり灸です。3回から5回をメドに私のところに通ってみてみませんか。そして体や心のちょっとした変化に気づいたらはり灸を続けてみてください。
 過去をリセットすることはできません。でもあなたにとって心の大きな部分を占めていた出来事や一言から解放されることはあるかもしれません。
 ぜひ一度ご相談を。そして一緒に知恵を出し合って健康な日々を取り戻すチャレンジをしてみませんか。